ε-δ 論法(イプシロンデルタろんぽう、(ε, δ)-definition of limit)は、解析学において、(有限な)実数値のみを用いて極限を議論する方法である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
以下のような極限を考えます。
$$ \displaystyle \lim_{x \to 0} \frac {2x^2+x} {x} = 1 $$
$$ y = f(x) = \frac {2x^2+x} {x} $$
\(f(x)\)は\(x=0\)では定義されませんが、 \(f'(x)\)は\(x=0\)では定義されます。
$$ f(x) = 2x + 1 \quad for \ x \neq 0 $$
$$ f'(0) = 1 $$
\(f(x)\) で\(1\)を左辺に移項して\(x\)を徐々に小さくし、\(x \rightarrow 0\)を考えます。
$$ f(x) -1 = 2x $$
$$ f(x)-1 = \frac{1}{100} \quad when \quad x= \frac{1}{200} $$
$$ f(x)-1 = \frac{1}{1000} \quad when \quad x= \frac{1}{2000} $$
\( f(x)-1 \) は徐々に小さくなり、 \(x \rightarrow 0\) で\(0\)に収束しそうです。
\(\epsilon\)が与えられたとき\(\delta\)が\(\frac{1}{2}\epsilon\)で定まるとすると、上式は以下のように考えることができます。
$$ f(x) -1 = \epsilon \quad when \quad x= \delta = \frac{1}{2}\epsilon $$
さらに上式は、 \(x \rightarrow 0\) の時 \(\epsilon\)が任意の正の数として与えられ\(\delta\)が\(\frac{1}{2}\epsilon\)で定まるとすると、\(x\)と\(0\)の距離が\(\delta\)より小さいとき、\(f(x)\)と1の距離は \(\epsilon\) より小さくなると考えることができます。
$$ if \quad |x|<\delta=\frac{1}{2}\epsilon \quad then \quad |f(x)-1|=2|x| < \epsilon $$
このような考え方を一般化すると、 ε-δ 論法になります。
関数\(f(x)\)に対して、極限の式
$$ \displaystyle \lim_{x \to a} f(x) = L $$
を ε-δ 論法で書くと、
$$ {\forall \ \epsilon >0,\ \exists \ \delta >0\ \mathrm {s.t.} \ \forall \ x\in \mathbb {R} \ [0<|x-a|<\delta \Rightarrow |f(x)-L|<\epsilon ]} $$
となります。
\( \epsilon\) は ‘error’ \(\delta\) は ‘distance’ だそうです。
極限を考えるとき、 \(\epsilon\) は任意に選べるので好きなだけ小さくとり、その\(\epsilon\) に応じて適当な\(\delta\)を選べば、 \(x\) が\(0< |x-a| < \delta\) を満たす限り、\(f(x)\) は\(L\)からせいぜい\(\epsilon\)しか離れてない範囲に存在します。
グラフを使うと以下のように考えることができます。
以下の極限を考えます。
$$ \displaystyle \lim_{x \to 2} 3x+4 = 10 $$
\(x\)が\(2\)に近づけば\(3x\)は\(6\)に近づき \(3x+4\)は\(10\)に近づきます。
以下の極限を考えます。
$$ \begin{align} \displaystyle \lim_{x \to 1} \frac{x^2-1}{x-1} &= \displaystyle \lim_{x \to 1} \frac{(x+1)(x-1)}{x-1}\\ &= \displaystyle \lim_{x \to 1} (x+1)= 2 \end{align} $$
\( \frac{x^2-1}{x-1} \)は\(x=1\)では定義されませんが、極限は\(x\)が\(1\)に限りなく近づいた場合を考えるので上のように計算することができます。
以下の極限を考えます。
$$ \displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{x}{|x|} $$
\(x\)が正の方から\(0\)に近づくと\(1\)に、 負の方から\(0\)に近づくと\(-1\)になるので以下のような場合分けを行います。
$$ \displaystyle \lim_{x \to 0+} \frac{x}{|x|} = 1 $$
$$ \displaystyle \lim_{x \to 0-} \frac{x}{|x|} = -1 $$
以下の極限を考えます。
$$ \displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{1}{x} $$
\(x\)が正の方から\(0\)に近づくと\(\infty\)に、 負の方から\(0\)に近づくと\(-\infty\)になるので以下のような場合分けを行います。
$$ \displaystyle \lim_{x \to 0+} \frac{1}{x} = \infty $$
$$ \displaystyle \lim_{x \to 0-} \frac{1}{x} = -\infty $$
以下の極限を考えます。
$$ \displaystyle \lim_{x \to 0} \frac{1}{x^2} $$
\(x\)が正の方から\(0\)に近づいても 負の方から\(0\)に近づいても \(\infty\)になります。
$$ \displaystyle \lim_{x \to 0-} \frac{1}{x^2} = \infty $$