相手国のリスクフリーレート\(r_f\)とすると、相手国の通貨を保持することは、相手国の通貨という資産を相手国のリスクフリーレート\(r_f\)で運用することを意味します。
つまり、外国為替とは、配当が組み込まれる資産の運用と同じように考えることができます。
\(y\)の配当が原資産に組み込まれる場合の先渡し契約の価値\(V(t)\)、適正価格\(K_T\)は、以下のように求まりました。
$$ V(t) = e^{-y(T-t)}S(t) – e^{-r(T-t)}K_T $$
$$ K_T = e^{(r-y)T}S(0) $$
外国為替の先渡し契約は、為替レートを\(S(t)\)、\(r_f\)を配当\(y\)と考えて上式に代入すれば求まります。
$$ V(t) = e^{-r_f(T-t)}S(t) – e^{-r_d(T-t)}K_T $$
$$ K_T = e^{(r_d-r_f)T}S(0) $$
ここで、上式を利用して、先渡し契約による円キャリート取引を具体的に考えてみます。
円キャリー取引(えんキャリーとりひき)は「円借り取引」とも呼ばれ、円資金を借入れて相場商品や証券など一般には金融資産を保有し、一定期間後に資産を売却しその売却対価によって、資金を付利して返済し、差額により利益を得ようとすることである。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
現在1ドル100円、日本円のリスクフリーレート1%、米ドルのリスクフリーレート5%、半年後の1ドル99円の先渡し契約があるとします。
つまり、
$$ S(0)=100 $$
$$ r_d = 0.01 $$
$$ r_f= 0.05 $$
$$ T = 0.5 $$
まず、この先渡し契約の適正価格を求めます。
$$ \begin{align} K_T &= e^{(r_d-r_f)T}S(0) \\ &= e^{(-0.04)0.5}100 \\ & \fallingdotseq 98.0199 \end{align} $$
半年後の1ドル99円の先渡し契約は高いので、先渡し契約ではショートポジションを取り、またドルをロングします。
例えば\(t=0\)の時点で100万円借りて10,000ドルを購入すると、半年後には以下のようなドルを持ちます。
$$ 10,000 \cdot e^{0.05 \cdot 0.5} \fallingdotseq 10,253.1512 $$
また、円の負債は以下のようになります。
$$ 1,000,000 \cdot e^{0.01 \cdot 0.5} \fallingdotseq 1,005,012.5209 $$
半年後に1ドル99円の先渡し契約を履行すると、以下の円を得ることができます。
$$ 10,253.1512 \cdot 99 = 1,015,061.9688 $$
この円で負債を返済すると以下のような利益を得ることができます。
$$ 1,015,061.9688 – 1,005,012.5209 = 10,049.4479 $$