事前に定まった収入のある原資産の先渡し価格

先渡し契約の期間中に、事前に定まった収入をもたらす原資産についての、先渡し価格を考えます。

期間中にもたらされる収入の時点\(t\)での割引価値を\(I(t)\)とすると、先渡し価格\(K_T\)は以下のように表すことができます。

$$ K_T = (S(0)-I(0))e^{rt} $$

これを以下と同じような流れで証明します。

以上の議論より、先渡し価格\(K_T\)は以下のように定まります。 $$ K_T = e^{rT}S(0) $$ \(K_T \neq e^{rT}S(0)\)の場合はアービトラージが生じます。 \(K_T \gt e^{rT}S(0)\)の場合の...

まず\(K_T \gt (S(0)-I(0))e^{rt}\)、つまり\(K_T – (S(0)-I(0))e^{rt} \gt 0\)の場合を考えます。

「高い物を売り安い物を買う」ので、先渡し契約ではショートポジションを取り、\(S(0)\)をリスクフリーレートで借り入れ、原資産を購入します。

この時点でのポートフォリオは、

  • 先渡し契約でのショートポジション
  • \(S(0)e^{rt}\)の借り入れ
  • 原資産

になり、また期限\(T\)までの間に、所有している原資産により、

  • \(I(0)e^{rt}\)

の収入が生じます。

期限\(T\)で先渡し契約が履行されるので、原資産を引き渡し、先渡し価格\(K_T\)を受け取り、ポートフォリオの価値は以下のようになります。

$$ K_T + I(0)e^{rt} -S(0)e^{rt} = K_T – (S(0)-I(0))e^{rt} \gt 0 $$

ポートフォリオがアービトラージになってしまっており、アービトラージが存在しないという前提では、

$$ K_T \leq (S(0)-I(0))e^{rt} \tag{1}$$

が示されます。

次に、\(K_T \lt (S(0)-I(0))e^{rt}\)、つまり\((S(0)-I(0))e^{rt} – K_T \gt 0\)の場合を考えます。

先渡し契約ではロングポジションを取り、また原資産を借りてショートすることで\(S(0)\)の現金を取得します。

この時点でのポートフォリオは、

  • 先渡し契約でのロングポジション
  • \(S(0)e^{rt}\)の預け入れ
  • 原資産のショート

となり、また期限\(T\)までの間に、借りている原資産により生じる収入を原資産の所有者に対して支払わなければならないので、

  • \(I(0)e^{rt}\)

の支払い義務が生じます。

期限\(T\)で先渡し契約が履行されるので、渡し価格\(K_T\)を支払い、原資産を受け取り、受け取った原資産とその間の収入相当額を返済することで、原資産のショートを解消します。

ポートフォリオの価値は以下のようになります。

$$ S(0)e^{rt} – K_T – I(0)e^{rt} = (S(0)-I(0))e^{rt} – K_T \gt 0 $$

ポートフォリオがアービトラージになってしまっており、アービトラージが存在しないという前提では、

$$ K_T \geq (S(0)-I(0))e^{rt} \tag{2}$$

が示されます。

\((1)(2)\)より、

$$ K_T = (S(0)-I(0))e^{rt} $$

となります。