先渡し契約の時点\(t\)での価値を、先渡し価格\(K\)、期限\(T\)として、\(V(t; K, T)\)とします。
また、\(K_T(t)\)を、時点\(t\)での先渡し契約における適正価格、つまりロング、ショートの双方とも利益がゼロになる先渡し契約の価格とします。
つまり、
$$ V(t; K_T(t), T) = 0 $$
を満たします。
期間中に収入の発生しない先渡し契約の場合、適正価格\(K_T(t)\)は、
$$ K_T(t) = e^{r(T-t)}S(t) $$
また、収入の発生する先渡し契約は、\(t\)から\(T\)の間に発生する収入の\(t\)時点での割引価値を\(I(t)\)として、
$$ K_T(t) = e^{r(T-t)}(S(t)-I(t)) $$
と表すことが出来ます。
先渡し契約の価値
先渡し契約の時点\(t\)での価値\(V(t; K, T)\)は、以下のように表すことができます。
$$ V(t; K, T) = (K_T(t)-K)e^{-r(T-t)} \tag{1}$$
証明
\((1)\)を示します。
時点\(t\)で以下の2つの先渡し契約を結ぶとします。
- 期限\(T\)先渡し価格\(K\)での先渡し契約のロングポジション
- 期限\(T\)先渡し価格\(K_T(t)\)での先渡し契約のショートポジション
時点\(\tau(t \leq \tau \leq T)\)でのこのポートフォリオの価値は、以下のように表すことができます。
$$ V(\tau; K, T) – V(\tau; K_T(t), T) $$
時点\(T\)において、それぞれの先渡し契約が履行されるので、その価値は以下のようになります。
$$ \begin{align} V(T; K, T) – V(T; K_T(t), T) &= (S(T) – K) – (S(T) – K_T(t)) \\ &= K_T(t) – K \tag{2}\end{align}$$
ここで、一物一価の原則より、このポートフォリオの\(T\)以前の価値は、\((2)\)の割引価値と一致します。
つまり、
$$ V(t; K, T) – V(t; K_T(t), T) = ( K_T(t) – K) e^{-r(T-t)} $$
ここで、\(K_T(t)\)は時点\(t\)での先渡し契約における適正価格であり、
$$ V(t; K_T(t), T) = 0 $$
なので、
$$ V(t; K, T) = (K_T(t)-K)e^{-r(T-t)} $$
となり、\((1)\)が示されます。
また、\((1)\)に
$$ K_T(t) = e^{r(T-t)}(S(t)-I(t)) $$
を代入すると、
$$ \begin{align} V(t; K, T) &= [e^{r(T-t)}(S(t)-I(t))-K]e^{-r(T-t)} \\ &= S(t)-I(t) – Ke^{-r(T-t)} \end{align} $$
となります。