アービトラージとは、必ず損をすることはないポートフォリオで、かつ利益のでる可能性のあるものです。
平たく言えば「必ず儲かる」ポートフォリオのことです。
定義
あるポートフォリオの時点\(t\)での価値を\(V(t)\)とすると、
$$ V(0) \leq 0 $$
であり、ある時点\(T \gt 0 \)では、
$$ Prob(V(T) \lt 0) = 0 \quad かつ \quad Prob(V(T) \gt 0) \gt 0 \tag{1}$$
となるポートフォリオがアービトラージです。
\((1)\)の最初の式は損することはないことを、次の式は利益の出る可能性のあることを表しています。
高い物を売り安い物を買う
アービトラージが存在する時は、「高いものをショート(売り)、安いものをロング(買い)」します。
具体的に考えます。
ある株の価格\(P_A(t)\)、\(P_B(t)\)、\(P_C(t)\)について、時点\(0\)での価格が以下のようになっているとします。
\(P_A(0)\) | \(P_B(0)\) | \(P_C(0)\) |
---|---|---|
100 | 200 | 450 |
これが時点\(1\)で、状態\(1\)か状態\(2\)の価格に変化するとします。
\(P_A(1)\) | \(P_B(1)\) | \(P_C(1)\) | |
---|---|---|---|
状態\(1\) | 200 | 300 | 700 |
状態\(2\) | 110 | 50 | 270 |
時点\(1\)での価格は、状態\(1\)状態\(2\)のどちらでも
$$ 2 \cdot P_A(1) + P_B(1) = P_C(1) $$
となりますが、
時点\(0\)での価格は、
$$ 2 \cdot P_A(0) + P_B(0) \lt P_C(0) $$
となり、\(C\)が過大評価されアービトラージが生じています。
時点\(0\)で、「高いものをショート(売り)、安いものをロング(買い)」に従い、\(C\)を一単位ショートし、\(A\)2単位と\(B\)1単位をロングします。
$$ V(t) = 2 \cdot P_A(t) + P_B(t) – P_C(t) + 50$$
時点\(1\)で状態\(1\)の時、ポジションを解消します。
$$ V(1) = 2 \cdot 200 + 300 – 700 + 50 = 50$$
時点\(1\)で状態\(2\)の時、ポジションを解消します。
$$ V(1) = 2 \cdot 110 + 50 – 270 + 50 = 50$$
どちらの状態になっても、50 の利益が出ます。