資本資産価格モデル(しほんしさんかかくモデル、英: Capital Asset Pricing Model, CAPM、シーエーピーエム、キャップエム)とは、金融資産の期待収益率のクロスセクション構造を記述するモデル。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
現代ポートフォリオ理論は、 それぞれのリスク資産の時系列データから期待収益と分散を導出し、それらの期待収益率と分散を前提として資産効率の高いポートフォリオを導きました。
資本資産価格モデル CAPMでは、完全市場で全ての参加者は現代ポートフォリオ理論に基づきそれぞれのポートフォリオを決定するという仮定のもとで、市場全体のリスク資産の期待収益や分散(システマティック・リスクまたはマーケット・リスク)と、個々のリスク資産の期待収益や分散を関係を理論的に定式化します。
投資を行う側から考えると、CAPMから導出される公式を使うことで、それぞれの資産の理論的な適正価格を導くことができます。
また、 現代ポートフォリオ理論の仮定の下では、多数の資産を組み入れてポートフォリオを組むことで個別資産それぞれのリスクは低減できるので、最終的にはマーケットリスクのみが問題となり、CAPM はこのマーケットリスクを測定する方法となります。
資本資産価格モデル CAPMの公式
導出は下記。
資本資産価格モデルでの個別資産i(または個別ポートフォリオ)の期待収益率E(Ri) は、無リスク資産の収益率 Rf、リスク資産マーケット全体の期待収益率E(Rm) 、係数βiを用いて、以下のように定まります。
E(Ri)–Rf=βi(E(Rm)−Rf)
E(Ri)=Rf+βi(E(Rm)−Rf)
無リスク資産の収益率 Rf は国債価格、マーケット全体の期待収益率E(Rm) は東証で考えれば TOPIX の収益率のように考えることができます。
E(Rm)−Rfは、マーケット全体の期待収益率と無リスク資産の収益率との差になっており、マーケット全体のリスクプレミアムです。
マーケット全体のリスクプレミアムと個別資産の期待収益率には線型の関係があります。
あるリスク資産へ投資を行った時に期待される収益率は、無リスク資産の収益率とリスクプレミアムから成ります。
資本資産価格モデルのβ
係数βi は、以下のように定まります。
βi=Cov(Ri,Rm)Var(Rm)
βi は、マーケット全体の分散と比較した場合のある個別資産iの相対的な分散を表しており、マーケット全体が動きに対して、個別資産 i がどのように動くかを表しています。
βi=1であれば、マーケット全体の分散と資産i の分散が同じ、つまり同じ動きをすることを意味します。
βi>1であれば、マーケット全体の分散より資産i の分散(リスク)が大きい、つまり 資産i のリスクが大きい分、期待リターンは大きいことを意味します。
βi<1であれば、マーケット全体の分散より資産i の分散(リスク)が小さい、つまり 資産i のリスクが小さい分、期待リターンは小さいことを意味します。
ポートフォリオの β の計算
個別資産i のβは、以下で計算できます。
βi=Cov(Ri,Rm)Var(Rm)
複数の資産からなるポートフォリオpの βpは、ポートフォリオを構成する資産 i の構成割合をwiとして、以下のように計算できます。
βp=n∑i=1βiwi
線形回帰を使ったβの計算とα
資本資産価格モデル CAPMの公式は、以下のようになっていました。
E(Ri)–Rf=βi(E(Rm)−Rf)
E(Ri)–Rfの値、(E(Rm)−Rf)の値は具体的に求めることができるので、 Cov(Ri,Rm)Var(Rm)ではなく、上式に線形回帰を使うことでβiを求めることもできます。
線形回帰でβiを求めると、傾きである βi だけでなく切片も求まり、この切片のことを αi と呼びます。
E(Ri)–Rf=αi+βi(E(Rm)−Rf)
αi はCAPMの理論で均衡した市場では0になるので、 αi は現実の市場の価格の歪みと考えることができます。
金融経済におけるアルファ値(アルファち、英: alpha value)とは、特定の証券に対する投資家の「期待(投資)収益率」と、資本資産価格モデル(英: capital asset pricing model, CAPM)による「均衡(期待投資)収益率」との差を指す。市場で形成される証券価格の歪みを表す尺度として利用される。
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