「上に有界な非減少数列は極限値を持つ」の意味

実数の連続性公理の一つである「上に有界な非減少数列は極限値を持つ」の意味を理解する。

まず、集合の上界、下界、有界、最大値、最小値、上限、下限を定義する。

$$ A := \{ \mathbb {R} の空でない部分集合\} $$

とする。例えば、\(A = [-1, 1]\)や\(A = \mathbb {N} \)が考えられる。

また、

$$ a \in \mathbb{R} $$

とする。

上界、下界

$$ a が A の上界 :\iff \forall x \in A に対して x \leq a $$

例えば、\(A = [-1, 1] \)において、

  • \(a=2\)は上界の一つである。
  • \(a=0\)は上界ではない。
  • \(a=-2\)は上界ではない。

$$ a が A の下界 :\iff \forall x \in A に対して x \geq a $$

例えば、\(A = [-1, 1] \)において、

  • \(a=2\)は下界ではない。
  • \(a=0\)は下界ではない。
  • \(a=-2\)は下界の一つである。

有界

$$ A が上に有界 :\iff Aの上界が少なくとも一つ存在する。$$

$$ Aが下に有界 :\iff Aの下界が少なくとも一つ存在する。$$

$$ Aが有界 :\iff Aが上に有界かつAが下に有界 $$

例えば、

$$ A = \{ x \in \mathbb{R} | x \lt 1 \} $$

であれば、

  • \(A\)は上に有界である。
  • \(A\)は下に有界ではない。

また、

$$ A = \{ x \in \mathbb{R} | -1 \leq x \leq 1 \} $$

であれば、

  • \(A\)は有界である。

最大値、最小値

$$ a が A の最大値 :\iff a \in A かつ a は A の上界 $$

$$ a = \max A と表す。$$

$$ a が A の最小値 :\iff a \in A かつ a は A の下界$$

$$ a = \min A と表す。$$

例えば、

$$ A = \{ x \in \mathbb{R} | -1 \leq x \leq 1 \} $$

であれば、

  • \(1\)は\(A\)の上界であり、最大値である。
  • \(2\)は\(A\)の上界であるが、最大値ではない。

上限、下限

$$ a が A の上限(最小上界)である :\iff a が A の上界の中の最小値である $$

すなわち、

$$ \forall x \in A に対して x \leq a (上界の定義)$$

$$ \forall \epsilon \gt 0 に対して \exists x \in A \mbox{ s.t } x \gt a – \epsilon $$

$$ a = \sup A と表す。$$

例えば、

$$ A = [-1, 1) $$

であれば、

$$ 1 – \epsilon \lt x \lt 1 $$

$$ 1 – \frac{\epsilon}{2} \lt x \lt 1 $$

$$ 1 – \frac{\epsilon}{3} \lt x \lt 1 $$

のように無限に\(x \in A \)を考えることができるので、

  • \(A\)の最大値は存在しない。
  • \(A\)の上限は\(1\)である。

$$ a が A の下限(最大下界)である:\iff a が A の下界の中の最大値である $$

すなわち、

$$ \forall x \in A に対して x \geq a (下界の定義)$$

$$ \forall \epsilon \gt 0 に対して \exists x \in A \mbox{ s.t. } x \lt a + \epsilon $$

$$ a = \inf A と表す。$$

数列の有界

$$ \{a_n\}が上に有界 :\iff \{a_n | n \in \mathbb{N} \}が上に有界 $$

$$ \{a_n\}が下に有界 :\iff \{a_n | n \in \mathbb{N} \}が下に有界 $$

$$ \{a_n\}が有界 :\iff \{a_n\}が上に有界かつ下に有界 $$

数列の単調増加、単調減少

$$ \{a_n\} が広義単調増加(非減少):\iff a_1 \leq a_2 \leq a_3 \leq \cdots $$

$$ \{a_n\} が広義単調減少(非増加):\iff a_1 \geq a_2 \geq a_3 \geq \cdots $$

実数の単調性公理

上に有界な非減少数列は極限値を持つ。

数列 \(\{a_n\}\) が広義単調増加、つまり \(a_1 \leq a_2 \leq a_3 \leq \cdots\)で、かつ上に有界、つまりすべての\(n\) に対して \(a_n \leq b \) となるような有限な実数 \(b\) が取れるとき、\(\{a_n\}\)は有限な極限値\(\alpha\) を持つこと、つまり、

$$ \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha \leq b $$

となることを認める