下記を参考に、外国為替市場での裁定取引について Python を使い考えます。
グラフには下記モジュールを使います。
外国為替市場の裁定取引
外国為替市場の裁定取引について具体的に考えてみます。
2020年2月28日のドル・円・ユーロの17時時点を使います。
下限では、ドル/円が108.83円、ユーロ/ドルが1.0996ドル(ドル/ユーロはその逆数で ≒ 0.9094 ユーロ)、ユーロ/円が119.67円となっています。
ドルをユーロ経由で円にするには、ドル/ユーロにユーロ/円をかけます。
$$ \frac{1} {1.0996 } \times 119.67 = 108.83… $$
となり、ドル/円のレートの下限と一致しています。
もしここで、ユーロ/円の交換に、上限の119.71円を使えるとします。
$$ \frac{1} {1.0996 } \times 119.71 = 108.86… $$
この時点でのドル/円のレンジは108.83~108.85なので、ドル→ユーロ→円→ドルを一度巡回すると、0.01~0.03円儲けることが出来ることになります。
グラフの最短経路問題への変換
ノードを通貨に、為替レートの対数に -1 をかけたものを辺の重みとするグラフを考えることで、上の問題を負の重み付きグラフの最短経路問題として考えることができます。
例えば、ドル→ユーロ→円の変換である\( 0.9094 \times 119.67 \) という計算は、左辺の対数を取ることで \( \log {( 0.9094 \times 119.67) } = \log 0.9094 + \log 119.67 \) と和として考えることができ、さらに -1 をかけることで、和を最小化するルートを探索する問題になります。
さらに負の閉路があった場合に負の閉路を取り出すことできれば、上のような裁定取引が実現できます。
具体的に計算する
以下から表を借りてきて、具体的に計算を行います。
為替レート | 円 | ドル | ポンド | ユーロ | クローナ | フラン |
日本円 | 1 | 0.00973 | 0.00608 | 0.00972 | 0.07222 | 0.01549 |
アメリカドル | 102.67 | 1 | 0.6248 | 0.9983 | 7.0422 | 1.5908 |
イギリスポンド | 164.32 | 1.6005 | 1 | 1.5978 | 11.88 | 2.5461 |
ユーロ | 102.85 | 1.0017 | 0.625 | 1 | 7.435 | 1.5935 |
デンマーククローナ | 13.83 | 0.1347 | 0.0841 | 0.1344 | 1 | 0.2143 |
スイスフラン | 64.54 | 0.6286 | 0.3927 | 0.6275 | 4.6657 | 1 |
以下の c のコードを参照します。
Finding a negative cycle in the graph
ベルマンフォードの応用です。
import collections import math import networkx as nx def neg_log(x): return - math.log(x) def negative_cycle(graph): n = len(graph.nodes()) dist = collections.defaultdict(lambda: 100000) pred = collections.defaultdict(lambda: -1) x = -1 for _ in range(n): for u, v in graph.edges(): weight = graph[u][v]['weight'] if dist[u] + weight < dist[v]: dist[v] = dist[u] + weight pred[v] = u x = v if x == -1: print('No negative cycle') return None for _ in range(n): x = pred[x] cycle = [] v = x while True: cycle.append(v) if v == x and len(cycle) > 1: break v = pred[v] return list(reversed(cycle)) if __name__ == '__main__': lst_currency = ['yen', 'dollar', 'pond', 'euro', 'krona', 'franc'] forex_matrix = [ [1, 0.00973, 0.00608, 0.00972, 0.07222, 0.01549], [102.67, 1, 0.6248, 0.9983, 7.0422, 1.5908], [164.32, 1.6005, 1, 1.5978, 11.88, 2.5461], [102.85, 1.0017, 0.625, 1, 7.435, 1.5935], [13.83, 0.1347, 0.0841, 0.1344, 1, 0.2143], [64.54, 0.6286, 0.3927, 0.6275, 4.6657, 1] ] graph = nx.DiGraph() graph.add_nodes_from(lst_currency) for i, from_currency in enumerate(lst_currency): for j, to_currency in enumerate(lst_currency): if i == j: continue graph.add_edge(from_currency, to_currency, weight=neg_log(forex_matrix[i][j])) # ['dollar', 'pond', 'euro', 'dollar'] print(negative_cycle(graph))
ドル→ポンド→ユーロ→ドル が負の閉路を形成しています。
実際\( 0.6248 \times 1.5978 \times 1.0017 = 1.0288 \) と、一回の巡回で2%ほどの利益が出るようです。
個人で応用する分には、メルカリ、ヤフオク、その他中古品取扱いの裁量取引かな。