先物取引の値洗い

先渡し契約と先物契約の違いの一つに、先渡し契約は期限までキャッシュフローは発生しないが、先物契約では、引き渡し時の価格を時価で日々洗い直すこと(値洗い)により日々キャッシュフローが生じる点があります。

先物取引は、日々の値洗いによりポジションの維持に必要な証拠金の調整を行うことで、決済日での信用リスクを低減させることができます。

契約期間中の日々をそれぞれ\(t_1=0, t_2, \cdots , t_N =T\)とします。

引き渡し期限\(T\)の\(t\)での価格を\(K_T(t)\)とします。

先渡し契約

先渡し契約では、期限日にのみ、以下のようなキャッシュフローが発生します。

ロング

\(T\)において、\(K_T(T)\)の価値の原資産を受け取り、\(K_T(0)\)のキャッシュを支払うので、以下のキャッシュフローが生じます。

$$ K_T(T) – K_T(0) $$

ショート

\(T\)において、\(K_T(0)\)のキャッシュを受け取り、\(K_T(T)\)の価値の原資産を引き渡すので、以下のキャッシュフローが生じます。

$$ K_T(0) – K_T(T) $$

先物契約

先物契約では、値洗いを行うことで、日々、以下のようなキャッシュフローが発生します。

ロング

\(K_T(t_{i+1}) \gt K_T(t_{i})\)、つまり引き渡し価格が上がると、\(t_{i+1}\)でのロングポジションは、\(t_{i}\)でのロングポジションと比較して、\(K_T(t_{i+1}) – K_T(t_{i}) \gt 0\)の利益が出ていると考えることができます。

\(K_T(t_{i+1}) \lt K_T(t_{i})\)、つまり引き渡し価格が下がると、\(t_{i+1}\)でのロングポジションは、\(t_{i}\)でのロングポジションと比較して、\(K_T(t_{i+1}) – K_T(t_{i}) \lt 0\)の損失が出ていると考えることができます。

つまり、値洗いにより、日々以下のキャッシュフローが生じます。

$$ K_T(t_{i+1}) – K_T(t_{i}) $$

日々のキャッシュフローの総和を取れば、当然ながら、先渡し契約の引き渡し期日のキャッシュフローと等しくなります。

$$ \displaystyle \sum_{i=1}^{N-1} (K_T(t_{i+1}) – K_T(t_{i})) = K_T(T) – K_T(0) $$

ショート

ロングの場合とは逆になり、値洗いにより、日々以下のキャッシュフローが生じます。

$$ K_T(t_{i}) – K_T(t_{i+1}) $$

また、こちらも総和を取れば、先渡し契約の引き渡し期日のキャッシュフローと等しくなります。

$$ \displaystyle \sum_{i=1}^{N-1} (K_T(t_{i}) – K_T(t_{i+1})) = K_T(0) – K_T(T) $$

証拠金と値洗い

値洗いにより日々生じるキャッシュフローは、証拠金により清算されます。

もし値洗いにより証拠金が最低証拠金を下回る場合は、最低証拠金を上回るように証拠金を積み増す必要があります。