漸近展開
漸近展開(ぜんきんてんかい、英: Asymptotic expansion)とは、与えられた関数を、より簡単な形をした関数列の級数として近似することをいう。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
与えられた関数\(f\)を\(x=a\)の近傍で級数に展開し、\(f\)のふるまいを調べる。
$$ f(x): x=a を含む開区間JにおいてC^n級 $$
$$(C^n級 :\iff n回微分可能でf^{(n)}が連続) $$
$$ \implies f(x) = \sum_{k=0}^{n} \frac{f^{(k)}(a)}{k!} (x-a)^k + o ((x-a)^n) \quad (x \to a) \tag{1}$$
証明
\(f\)は\(C^n\)級なので\(n\)回微分可能。
よって、テイラーの定理より、ある\(\theta \ (0 \lt \theta \lt 1) \)が存在して、
$$ \begin{align} f(x) &= \sum_{k=0}^{n-1} \frac{f^{(k)}(a)}{k!} (x-a)^k + \frac{1}{n!} f^{(n)}(a + \theta(x-a))(x-a)^n \\ &= \sum_{k=0}^{n} \frac{f^{(k)}(a)}{k!} (x-a)^k + \frac{(x-a)^n}{n!}(f^{(n)}(a + \theta(x-a)) – f^{(n)}(a)) \end{align} $$
これを\((1)\)と比較すると、第1項は等しいので、第2項を、
$$ \varphi _n (x) = \frac{(x-a)^n}{n!}(f^{(n)}(a + \theta(x-a)) – f^{(n)}(a)) $$
とおいて、
$$ \varphi _n (x) = o ((x-a)^n) \quad ( x \to a) $$
すなわち、ランダウの記号\(o\)の定義より、
$$ \lim_{x \to a} \frac{ \varphi _n (x)}{(x-a)^n} = 0 $$
を示せばよい。
$$ \frac{ \varphi _n (x)}{(x-a)^n} = \frac{1}{n!} (f^{(n)}(a + \theta(x-a)) – f^{(n)}(a)) $$
\(f\)は\(C^n級\)なので\(f^{(n)}\)は連続である。
よって、\(x \to a \)のとき、\(a+ \theta (x-a) \to a \)ならば、
$$ \lim_{x \to a} \frac{ \varphi _n (x)}{(x-a)^n} = 0 $$
となる。
つまり、
$$ \lim_{x \to a} ( a+ \theta (x-a)) = a $$
を示せばよい。
$$0 \lt \theta \lt 1より、|\theta | \lt 1 $$
$$ \begin{align} | a + \theta(x-a) -a| &= |\theta (x-a) | \\ &= |\theta | |x-a| \lt |x-a| \quad \because |\theta | \lt 1 \end{align} $$
$$ \therefore \lim_{x \to a} ( \theta (x-a)) = 0 $$
よって、
$$ \lim_{x \to a} ( a+ \theta (x-a)) = a $$
が示された。
以上より、
$$ f(x) = \sum_{k=0}^{n} \frac{f^{(k)}}{k!} (x-a)^k + o ((x-a)^n) \quad (x \to a) $$
も示された。
また、\(f\)が\(C^{\infty}\)級のとき、
$$ f(x) \sim \sum_{n=0}^{\infty} \frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^n \quad (x \to a) $$
を、
$$ x \to a のときの f の漸近展開 $$
という場合がある。
この場合の注意として、テイラー展開は、
$$ \sum_{k=0}^{n} \frac{f^{(k)}}{k!}(x-a)^k \to f(x) \quad (n \to \infty) $$
と収束を保証するものであるが、漸近展開では収束は保証されていない。
また、漸近展開は\((左辺) \sim (右辺)\)であり、両辺が等しいわけではない。
\(x \to a\)、つまり\(a\)の近傍でののみ成立する。