テイラーの定理

微分積分学において、テイラーの定理(テイラーのていり、: Taylor’s theorem)は、k 回微分可能関数の与えられた点のまわりでの近似を k 次のテイラー多項式によって与える

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

「関数を多項式(級数)で近似することで、そのままでは扱うのが難しい関数を扱いやすい形に変える」というアイデア。

具体的な例として、多項式の係数を導関数を用いて表すことを考える。

$$ f(x) = c_0 + c_1 x + c_2 x^2 + \cdots + c_n x^n $$

という\(n\)次多項式の係数\(c_0, \ldots, c_n\)を、\(x=0\)における\(f, f’, f”, \ldots\)を用いて表す。

$$ f(0) = c_0 $$

$$ \therefore c_0 = f(0) $$

$$ f'(x) = c_1 + 2 c_2 x + \cdots + n c_n x^{n-1} \quad f'(0) = c_1$$

$$ \therefore c_1 = f'(0) $$

$$ f”(x) = 2 c_2 + 3 \cdot 2 c_3 + \cdots + n (n-1) c_n x^{n-2} \quad f”(0) = 2c_2$$

$$ \therefore c_2 = \frac{f”(0)}{2} $$

$$ f^{(3)} = 3 \cdot 2 c_3 + \cdots + n (n-1)(n-2) c_n x^{n-3} \quad f^{(3)}(0) = 3 \cdot 2 c_3$$

$$ \therefore c_3 = \frac{f^{(3)}(0)}{3 \cdot 2} $$

$$ \cdots $$

$$ f^{(k)} (x) = k! c_k + (k+1) \cdots 2 c_{k+1} x + \cdots + n (n-1) \cdots (n-k+1) c_n x^{n-k} $$

$$ f^{(k)} (0) = k! c_k $$

$$ \therefore c_k= \frac{f^{(k)} (0)}{k!} $$

となる。

「初頭関数でも同様の近似を行うことができる」というのがテイラーの定理。

テイラーの定理

$$ f(x):[a, b]で (n-1) 回微分可能 $$

$$ f, f’, \ldots , f^{(n-1)}は[a, b]で連続 $$

このとき、

$$ f^{(n-1)}が(a, b)で微分可能ならば、ある c \in (a, b)が存在して、$$

$$ f(b) = f(a) + \frac{f'(a)}{1!}(b-a) + \frac{f”(a)}{2!}(b-a)^2 + \cdots + \frac{f^{(n-1)}(a) }{(n-1)!}(b-a)^{n-1} + \frac{f^{(n)}(c)}{n!}(b-a)^n \tag{1}$$

が成立する。

証明

まず、ある実数\(K\)が存在して、

$$ f(b) = f(a) + \frac{f'(a)}{1!}(b-a) + \frac{f”(a)}{2!}(b-a)^2 + \cdots + \frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(b-a)^{n-1} + \frac{K}{n!}(b-a)^n \tag{2}$$

が成り立つことに注意する。

$$ (\because (左辺)=(右辺)になるようにKを実数の範囲で適当に調節する。)$$

次に、\(x \in [a, b]\)に対し、関数\(F(x)\)を定義する。

(平均値の定理を適用できるような関数にするため\(F(x)\)という関数をつくる。)

$$ F(x) = f(b) – \left\{ f(x) + \frac{f'(x)}{1!}(b-x) + \frac{f”(x)}{2!}(b-x)^2 + \cdots + \frac{f^{(n-1)}(x)}{(n-1)!}(b-x)^{n-1} + \frac{K}{n!}(b-x)^n \right\} \tag{3}$$

すると、

$$ F(b) = 0 \because 右辺に0を代入する $$

$$ F(a) = 0 \because (2)よりF(a) = f(b) – \{f(b)\} = 0 $$

また、

$$ F(x)は[a, b]で連続、(a, b)で微分可能 $$

よって、平均値の定理より、

$$ ある c \in (a, b) が存在してF'(c) =0 が成立する。$$

\((3)\)より、

$$ \begin{align} F'(x) = – &[ f'(x) \\ &+ \left\{ \frac{f”(x)}{1!}(b-x) – \frac{f'(x)}{1!} 1 \right\} \\ &+\left\{ \frac{f^{(3)}(x)}{2!}(b-x)^2 – \frac{f”(x)}{2!} 2(b-x) \right\}\\ &+\left\{ \frac{f^{(4)}(x)}{3!}(b-x)^3 – \frac{f^{(3)}(x)}{3!} 3(b-x)^2 \right\} \\ &\cdots \\ &+\left\{ \frac{f^{(n)}(x)}{(n-1)!}(b-x)^{n-1} – \frac{f^{(n-1)}(x)}{(n-1)!} (n-1)(b-x)^{n-2} \right\} \\ &- \frac{K}{n!}(b-x)^{n-1} ] \end{align} $$

ここで、上式はそれぞれの項を互いに打ち消すことができ、

$$ \begin{align} F'(x) &= – \frac{f^{(n)}(x)}{(n-1)!}(b-x)^{n-1} + \frac{K}{n!}(b-x)^{n-1} \\ &= \frac{(b-x)^{(n-1)}}{(n-1)!} \{ K – f^{(n)}(x) \} \end{align}$$

よって、

$$ F'(c) = \frac{(b-c)^{(n-1)}}{(n-1)!} \{ K – f^{(n)}(c) \} = 0 $$

ここで、\(a \lt c \lt b\)より、

$$ \frac{(b-c)^{(n-1)}}{(n-1)!} \neq 0 $$

よって、

$$ K – f^{(n)}(c) = 0 $$

$$ K = f^{(n)}(c) $$

これを\((2)\)に代入すると、

$$ f(b) = f(a) + \frac{f'(a)}{1!}(b-a) + \frac{f”(a)}{2!}(b-a)^2 + \cdots + \frac{f^{(n-1)}}{(n-1)!}(b-a)^{n-1} + \frac{f^{(n)}(c)}{n!}(b-a)^n $$

となり、\((1)\)となる。

ラグランジュの剰余項

テイラーの定理

$$ f(b) = \sum_{k=0}^{n-1} \frac{f^{(k)}(a)}{k!}(b-a)^k + \frac{f^{(n)}(c)}{n!}(b-a)^n $$

において、

$$ R_n = \frac{f^{(n)}(c)}{n!}(b-a)^n $$

をラグランジュの剰余項という。

テイラーの定理の別の表現

$$ f(x): 点x=a を含む開区間 J において n 回微分可能 $$

このとき、\(\forall x \in J\)に対して、ある\(\theta \ ( 0 \lt \theta \lt 1)\)が存在し、

$$ f(x) = \sum_{k=0}^{n-1} \frac{f^{(k)}(a)}{k!} + R_n(x) $$

$$ R_n(x) = \frac{f^{(n)}(a + \theta(x-a))}{n!}(x-a)^n $$

が成立する。

テイラー展開

\(f(x)\)と点\(a\)を含む開区間\(J\)において、\(\forall x \in J\)に対し、

$$ \sum_{k=0}^n \frac{f^{(k)}}{k!}(x-a)^k \to f(x) \quad (n \to \infty) $$

が成り立つとき、

$$ f(x) はx=aのまわりでテイラー展開可能である $$

という。

このとき、無限級数

$$ \sum_{n=0}^{\infty} \frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^n $$

を、

$$ f(x)の点 x=a のまわりでのテイラー展開 $$

という。